オフショア開発で人件費を抑え、コストメリットを得ようとする企業が増えてきました。かつては中国で勢いのあったオフショア開発は、2006年ごろからはベトナムやフィリピンなど東南アジアの国々でも盛んに行われるようになっています。どうして導入する企業が増えているのかと気になる人もいるでしょう。
そこで、この記事では、オフショア開発を導入する理由やメリット・デメリット、国ごとの動向などについて【2021年度版】として解説します。
1.オフショア開発の概要
オフショア開発とは、さまざまなプロジェクトにおいて海外の企業にIT業務を委託することです。人件費が安い国の企業に業務委託することで、コストメリットを得る狙いがあります。
日本では、1980年代に入って中国を中心にオフショア開発が行われるようになりました。2006年ごろからはインドやベトナムなどの企業に委託するケースが増えています。委託する業務はシステム開発が主流でしたが、時世の流れに伴いスマホアプリやソーシャルゲームの開発も増えています。
「オフショア開発白書2021年版」によると、AI開発やIoT開発、VR開発といった先端テクノロジーに関わる案件も増えています。
2.オフショア開発が導入される理由
企業がオフショア開発する大きな理由としては、まず開発コストの削減が挙げられます。これは、日本より人件費の安い国で開発することでコストを抑えられるからです。
また、IT人材やリソースの確保も大きな理由といえます。日本では少子高齢化の影響で建築や介護などさまざまな業界が人手不足に悩まされていることは知っている人も多いでしょう。
これは、IT業界も例外ではありません。経済産業省による「IT人材受給に関する調査」でも、IT業界が深刻な人手不足に陥っていることは明らかです。そこで、優れたIT人材を確保するために、オフショア開発している企業もあります。
特に、ベトナムやフィリピンなどの東南アジアの新興国のなかには、国としてIT事業に力を入れ、IT産業大国として発展しているところも多いです。高度なIT技術による開発が期待できるのも、企業がオフショア開発する理由の1つでしょう。
また、ビジネスのグローバル化が急激に進んだことも理由と考えられます。海外進出のハードルが下がったことで、海外に拠点を確保することを目的としてオフショア開発するケースもあります。
3.オフショア開発のメリットとデメリットを知ろう
オフショア開発を検討するときは、メリットにばかり気を取られがちです。しかし、当然ながらデメリットもあります。適切に判断するためには、メリットもデメリットも十分に把握しておくことが欠かせないでしょう。
そこで、この段落ではオフショア開発におけるメリットとデメリットについて解説します。
3-1.オフショア開発のメリット
大きなメリットとして、まずはコストを抑えられる点が挙げられます。これは、日本人エンジニアより、新興国のエンジニアのほうが人件費は安いからです。
ただし、1980年代と比べると、中国などは人件費が高騰してきています。以前ほどのコストメリットは期待できなくなりつつあるでしょう。技術レベルが上がり、先端テクノロジーに対応できるエンジニアが増えている点もメリットの1つです。海外のリソースを活用することで案件に速やかに着手でき、納期を短縮できる点も大きな利点でしょう。
3-2.オフショア開発のデメリット
人件費が安いことから、1980年代は中国でオフショア開発する企業が非常にたくさんありました。しかしながら、技術力の向上に伴い、中国の人件費は高騰しつつあります。インドでも同じような状態です。ほかの人件費が安い国でも今後は高騰する可能性があり、そうなるとコストメリットを得にくくなるでしょう。
また、距離があることに加え言語や文化の異なる海外のエンジニアとはコミュニケーションが難しい点もデメリットの1つです。うまく意思の疎通が図れないうえに国民性も習慣も異なるため、成果物の仕様が異なったり、納期に間に合わないといったトラブルが発生したりするなど、業務がスムーズに進まないことも少なくありません。
さらに、時差についても注意が必要です。欧米ほどではないものの、日本とは数時間の時差があります。そのため、急ぎの仕様書の変更などで連絡を取りたいと思っても、オフィスに誰もいないといったこともあり得ます。
4.オフショア開発動向「国別人気ランキング」
オフショア開発では委託先をどこにするかが非常に重要なポイントとなります。成功するためには、単純に人件費が安いだけで選ぶのではなく、国民性や技術力など各国の特徴や動向も考えて委託先を決定することが欠かせません。
ここでは、「オフショア開発白書2021年版」に基づき、委託先として人気のある国をランキング形式で紹介します。
4-1.1位:ベトナム
東南アジアのオフショア新興国のなかでも、特に高い人気を誇るのがベトナムです。「オフショア開発白書2021年版」によると、実に50%以上の企業がオフショア先としてベトナムを希望していました。
これほど高い人気があるのは、まじめで勤勉な国民性で親日派の人が多くて日本企業と相性が良いこと、人件費が安いこと、優秀なIT人材が豊富なことなどが理由でしょう。人件費は、プログラマー1人あたりの平均値が月に35万円程度で、他国と比べて安めです。
また、ベトナムでは国を挙げて人材の育成に取り組んでおり、オフショア開発に適した優秀な人材がたくさん育っています。英語や日本語の習得に熱心に取り組む人も多く、他国と比べてコミュニケーションが取りやすい点も大きな魅力です。
4-2.2位:フィリピン
フィリピンも人気が高まりつつある委託先です。人件費はプログラマー1人あたりの平均値が月に35万円程度で、ベトナムとほとんど変わりません。英語が公用語の1つであることから、大卒程度のフィリピン人であればほとんどが英語を話せます。英語中心でやり取りしたい企業であれば、委託先として向いているでしょう。
しかしながら、国民性や文化的背景から、仕事に対する意識は日本人とは大きく異なります。プロジェクト開始前に、入念に打ち合わせをすることが必要です。
4-3.3位:インド
インドはIT大国として広く知られる国で、優秀なエンジニアも数多く存在します。他国よりも早くオフショア開発に取り組んできた歴史があり、高い技術力に加えて豊富なノウハウも保有している点が大きな魅力です。そのため、オフショア開発の委託先として安定して高い人気を誇ります。
ただし、プログラマー1人あたりの人件費の平均は月に35万円前後で、じわじわと高くなりつつある点に注意が必要です。技術力があるので、インドには上流工程を委託したほうがコストメリットは出しやすいでしょう。
4-4.4位:バングラデシュ
バングラディッシュの人件費はエンジニア1人あたり平均で月25万円程度と非常に安く、コストメリットが大きいです。オフショア開発であれば100%免税などの国策を掲げていることからIT分野で急激な発展がみられ、優秀な人材が多く育っています。
公用語はベンガル語ですが、小学校のころから英語学習に力を入れており、エンジニアの多くは英語を話すことが得意です。英語でのコミュニケーション力は概して高いといえるでしょう。親日的な人も多いですが、高い日本語力を持つエンジニアは多くありません。
4-5.5位:ミャンマー
ミャンマーのオフショア開発の人件費は、プログラマー1人あたりの平均値が25~30万円と比較的リーズナブルです。国として日本語教育に力を入れているため、なかには日本語でのコミュニケーションが可能なエンジニアもいます。国民性もまじめで勤勉、協調性があり、日本人とは相性が良いでしょう。
ただし、多くの地域でインフラが不安定で、首都であってもしばしば停電が起こる点に注意が必要です。ミャンマーでオフショア開発するのであれば、プロジェクトに遅れが出ることも想定したほうが良いでしょう。
4-6.6位:中国
中国はオフショア開発としての歴史が長い国ですが、人件費が高騰していることからコストメリットは期待できなくなっています。プログラマー1人あたりの平均人件費は40万円以上です。特に、上海や北京、大連などの沿岸部を中心に世界トップクラスの技術力を持つエンジニアが多く、コストも高くつきます。内陸部であれば、まだ人件費が安いところもあるでしょう。
5.メリットの多いオフショア開発!ぜひ活用の検討を
オフショア開発は、コスト削減を目的として行われてきましたが、リソース確保や海外拠点の確保や、高度な技術による開発を求める側面も強くなりつつあります。IT新興国であるベトナムやフィリピンなど、東南アジアの国々が委託先として人気です。
NSMでは、安全で確実、かつコストも抑えられるベトナムでオフショア開発を行っています。オフショア開発を検討している企業は、ぜひご相談ください。