モノや人の自動認識に使われるICタグを活用して業務課題を解決する企業が増えています。日本では特にアパレル産業での利用が進んでいますが、近年ではその他の産業分野でも導入する動きが活発化しており、需要は拡大傾向です。国内におけるICタグの活用事例を紹介します。
市場概況
モノや人の自動認識に使われるICタグやリーダライタ、アプリケーションなどで構成されるRFIDソリューション。製造・流通・小売システムの効率化や、トレーサビリティをはじめとするさまざまなニーズを背景に需要が拡大しています。矢野経済研究所によると、2018年のRFIDソリューション国内市場規模は383億1,000万円で、前年比106.2%の成長を示しています。
ICタグの導入は、特にアパレル産業で進んでいます。国内外ともに、アパレル産業向けの低価格汎用品のICタグの需要は拡大する見込みです。
そのほかの分野でも、今後、汎用品での実現が難しいニーズの拡大が見込まれることから、高機能型ICタグの実用化に向けた動きも活発になっています。
ICタグ活用事例
ファーストリテイリング:生産から販売まで全過程を効率化。レジ待ち時間も改善
ユニクロを運営するファーストリテイリングは、2018年春夏商品から、すべてのグループブランド商品を対象にICタグの貼付を始めました。生産段階からすべての商品にICタグを付けることで、商品の検品から販売に至るすべての過程の効率化を進めています。人が行う在庫確認では時間がかかりエラーも発生していましたが、ICタグの導入によってサプライチェーン全体で、商品の在庫情報を瞬時に正しく把握できるようになりました。
店舗のレジ待ち時間の改善にも貢献しています。購入したい商品を置くだけで瞬時に合計金額が算出されるセルフレジを設置したことで、精算にかかる時間の大幅な短縮が実現されたのです。
ZARA:配送量と在庫量の管理精度が向上し、販売機会ロスが低減
スペインに本社があるアパレル企業ZARAは2009年より、物流段階と店頭での販売における効率化をめざしてRFIDシステムの導入を開始しました。世界中にZARA店舗を展開するインディテックスグループでは、2015年に日本国内店舗でもICタグを導入しました。ICタグの導入後、スペインに9カ所ある物流拠点に集まったすべての商品を、世界各地からの店舗の発注に応じアソートと配送を行う精度が向上しています。
店舗に届いた商品を開封しなくても品番や数量を把握できるようになったため、品出し前のチェック時間が短縮。適正在庫量の維持が容易になり、販売機会の損失が減少するという効果も見えています。
ローソン:食品ロス削減や店舗の利便性向上をめざす
店舗業務の効率化や人手不足への対応が迫られているコンビニ業界でも、ICタグの活用が進められています。ローソンは2019年、食品ロスの削減や効率化などを目的として、経済産業省主導のもと、ICタグを活用した実証実験を実施しました。
この実験では、消費期限が近い対象商品の購入者にLINEポイント(10ポイント)を還元するダイナミックプライシングが実施されています。食品ロス削減と売上増を期待できる施策です。
同時期に、ICタグリーダ付きレジを実験対象店舗に設置しました。店員がレジで商品スキャン登録や袋詰めをせずにすむため、店舗業務の省力化につながります。
豊田通商:自動車部品の棚卸し時間を短縮
物流業界では、人手不足への対応やBCP(事業継続計画)の観点も含めたサプライチェーンマネジメント構築などを目的として、ICタグの導入が進められています。トヨタグループの総合商社である豊田通商と子会社の豊通物流は、2019年にICタグを使った入出庫・棚卸システムを試験的に導入しました。
試験導入前の課題のひとつだったのが、ICタグの読み取り精度です。自動車部品の形状や材質は個々でかなり異なり、金属製品も多いため、ICタグの読み取り精度が低くなってしまいます。同社ではこうした課題の検証に2年間を費やし、入出庫時のICタグ読み取りシステムと、ICタグのリーダを搭載したAGV(Automatic
Guided
Vehicle、無人搬送車)を製作、試験導入に至りました。
このシステムを導入したことによって、倉庫で高さ6メートルの棚にあるタグの自動読み取りが可能になりました。在庫を毎回降ろして作業をする必要がなくなり、棚卸作業が効率化されたのです。その結果、自動車部品の棚卸時間が8分の1に短縮したことが、同社のプレスリリースでも明らかにされています。
公共図書館:貸出返却業務の自動化、蔵書点検時間の削減
ICタグは公共施設にも導入されています。図書館はICタグの導入が進んでいる分野のひとつで、利用者へのサービス向上や蔵書管理の効率化に貢献しています。
東京都三鷹市では2009年、図書館利用者や予約者の増加を見越して、市立図書館全館と移動図書館にICタグシステムを導入。貸出と返却のセルフ化を実現しました。
岩手県江刺市立図書館では、ICタグシステムの導入によって蔵書点検の迅速化・正確化・省力化を実現しています。ICリーダによる蔵書点検を実施したところ、7人で95,000冊の蔵書に対応。不明図書の捜索や書架整理を含めて5日間で終了したとの結果が出ています。
式典受付:高いセキュリティ性を確保して受付時間を短縮
国土交通省が主催する式典では、円滑な進行のために多くの列席者を安全かつ迅速に受付することが求められます。
2007年に開催された第18回全国「みどりの愛護」のつどいでは、ICタグを活用した受付システムが採用されました。天皇皇后両陛下(当時皇太子ご夫妻)がご臨席された式典で、参加者約1,500名の受付を、高いセキュリティ性を確保して短時間で完了させています。
オリンピック・パラリンピック:民間警備員の制服を追跡調査可能に
衣類の紛失を防ぐために、洗濯機や乾燥機への耐久性が強いICタグを衣類に埋め込む活用事例もあります。
オリンピック・パラリンピックの民間警備員は、所属会社を問わず統一の制服を着用します。この制服には所属会社の情報が入ったICタグが内蔵されており、追跡調査ができるようになっています。盗難防止だけでなく、流出、偽造などの悪用を阻止することがねらいです。
広がるICタグの活用事例
紹介した事例のほか、金融や医療、ユニフォームレンタル・クリーニングなどの業界でもICタグの利用が進んでいます。また、真贋判定機能を持つICタグのように、より多彩なニーズに対応するICタグの開発が実用化に向けて進んでおり、ICタグの活用事例は今後ますます増えると予想されます。いま抱えている業務上の課題は、ICタグを活用したRFIDソリューションで解決できるかもしれません。RFIDソリューションの導入実績が豊富なSIerに、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
NSMは導入実績が豊富な独立系SIerのひとつです。メーカーにとらわれることなく最適なICタグを選定し、導入・運用までトータルでRFIDソリューションを提供しています。ICタグのご相談や、導入にお困りの際は、まずはNSMにご相談ください。
関連記事:「ICタグ入門~多くの課題を解決する可能性を秘めた小さな巨人」
NSMのソリューション事業
当社はICタグを活用し、システム構築から運用支援まで
一貫したRFIDソリューションをご提供しています。
ソリューション事業一覧を見る