情報化社会においてITビジネスのニーズは高まる一方です。しかし、それを担う日本の技術者は人材不足が続いています。オフショア開発はその問題の解消に役立つうえに、海外への委託によりコスト削減も期待できる開発の手段です。
この記事では、オフショア開発の概要や目的を紹介するとともに、契約の種類や導入時の注意点なども解説します。
1.オフショア開発とはなにか?
オフショア開発とは、IT開発などの業務をアウトソーシングすることであり、その相手は海外企業や海外の現地法人です。開発対象は業務ソフトウェアやWebコンテンツをはじめとして多岐にわたります。
スマホの普及によって、スマホアプリやソーシャルゲームの開発を委託するケースも増えてきました。IT系の分野ではすでに半分近くの日本企業が導入済みといわれており、さまざまな利点がある開発手法ということで注目を浴びる機会が多くなっています。
2.オフショア開発の目的
企業によってオフショア開発の目的は異なりますが、主なものとしてコスト削減が挙げられます。アジア圏を中心とした諸外国では、エンジニアの人件費は日本よりも安いことが多いです。そのため、必要なエンジニアが多いときほど、オフショア開発を選ぶとコストを抑えやすくなります。
また、リソースの確保も主な目的の一つであり、日本人のエンジニア不足への対策として導入する企業も少なくありません。日本とは対照的に、海外にはエンジニアが増えている国もあり、そちらの企業に委託することで人材の確保をスムーズに行えます。
実際には、これら2つの目的を両方とも持っており、コストを抑えながら優秀な人材を確保して活用するケースがよく見受けられます。このようなチャンスをつかめることもオフショア開発の魅力です。
他にも、納期が短い案件への対応を求められ、その打開策としてオフショア開発で人材を大量に確保するようなパターンもあります。IT業界ではスピードが重要であるため、早期に対応を始められることは大きなメリットです。海外市場への進出を視野に入れた場合は、現地の企業に委託する目的として、そこに適した開発スキームを確立します。
また、AIなどの新技術を搭載したシステムやアプリを作成するために利用するパターンもあります。一般的に、難易度の高い案件は担当できるエンジニアが少なく、その分だけコストも上がってしまいます。オフショア開発では、そのような案件でも安い費用でトライアルの実施が可能です。コストパフォーマンスに満足したら、そのまま委託するという一連の流れができています。
3.オフショア開発の委託先で多い国は?
日本企業が主にオフショア開発を委託しているのはアジア圏の国々です。そのなかでも中心となっているのはインドや中国であり、ベトナムやインドネシアも人気があります。以前からインドや中国は定番の委託先で、2021年現在においてベトナムの需要も増加の傾向が強いです。ベトナムに注目が集まっている理由として、人件費の安さや真面目な国民性といった魅力が挙げられます。
また、タイやフィリピンなどに委託するケースもあるなど、日本企業にとっては複数の選択肢が用意されている状況です。なお、これらの国々の多くは、国家が推進する形でIT系の人材を育成しています。つまり、オフショア開発の委託に応えられる環境が積極的に整えられているということです。
4.オフショア開発の進め方
オフショア開発は、日本で案件を受注することから始まります。そして、案件に対してブリッジSEを割り当て、開発自体は海外で行うのが一般的です。ブリッジSEとは、海外での開発をスムーズに進めるために、現地のメンバーと日本企業の橋渡しの役割を努めるスタッフを指します。このようなスタッフが必要なのは、両者の間に物理的な距離や言葉の違いがあるからです。
ブリッジSEによるサポートがあるとはいえ、日本企業もそのような課題を事前に認識しなければなりません。そのうえで、意思をしっかり伝達できるコミュニケーションを心がけていく必要があります。
委託する具体的な内容は契約によってさまざまです。資料の作成など細々とした作業を任せることも可能ですが、業務が幅広くなると現状の把握が難しくなりかねません。プログラミングに専念させるような限定的な契約のほうが、開発をコントロールしやすくなります。また、オフショア開発における人材確保の基本は、現地で外国人のエンジニアを採用することです。一方、日本の拠点で研修制度を実施し、エンジニアの技術を身につけた外国人を雇うパターンもあります。
5.オフショア開発の契約は主に2種類!受託契約とラボ契約
オフショア開発の契約は、「受託契約」「ラボ契約」の2種類に大きく分けられます。それぞれ異なる特徴があるので、正しく理解したうえで選択することが大事です。ここでは、具体的にどのような特徴があるのか説明します。
5-1.受託契約
受託契約は、日本企業が提示する仕様書などに沿って成果物を完成させてもらう契約です。委託されたオフショア開発会社は責任を持って期日までに仕上げなければなりません。基本的に、開発のすべての工程を任せることになり、開発チームの構築やプロジェクト管理などもオフショア開発会社が担当します。
日本企業で行うのは、プロジェクトマネージャーが定期的に進捗報告を受けることです。そして、順調かどうかを判断し、状況によっては改善を要望するケースもあります。
しかし、基本的には日本企業側にほとんど作業が発生しないため、社内のリソース不足が問題となっている場合にうってつけです。リソース問題によって新規開発が難しい状況なら、受託契約は有効な解決策になります。ただし、開発途中で仕様を変更したい場合は、その分の見積もりも必要なので気を付けましょう。
5-2.ラボ契約
ラボ契約では、契約後からの一定期間、自社用の専属チームを委託先に結成します。開発とフィードバックを短いサイクルで積み重ねていくことが特徴です。その過程で改善点が見つかることも多いため、仕様をブラッシュアップしていくスタンスの開発で効果を発揮します。また、開発ごとに専属チームの解散や結成をする必要がありません。
中長期的に開発メンバーを維持できることは大きなメリットといえます。技術やノウハウなどの蓄積が可能であり、やり取りを繰り返すうちに信頼関係も築きやすくなるからです。一時的に開発が途切れたとき、そのせいで優秀な人材が他に移ってしまうことも防げます。
さらに、急な仕様変更や追加の開発に対応しやすいこともメリットの一つです。それらが必要になっても、最初に期間をベースとして契約しているため、新たに見積もりを取らずに済みます。
6.いいことばかりではない?オフショア開発の注意点
契約前に把握しておいたほうが良い注意点もあります。オフショア開発を日本で行っているベトナムの企業では、ベトナム人がブリッジSEや営業を務めているケースが少なくありません。この場合、橋渡しの役割を外国人が担当するため、コミュニケーションを取りづらいリスクに警戒が必要です。また、文化の違いが原因となって、進捗管理の難易度が上がるケースも見受けられます。
たとえば、日本の技術者は、進捗が遅れていると何とか挽回しようとするのが一般的です。これに対して、必死に対処しようとする発想が浮かびにくい文化の国もあります。
委託先との時差にも注意しなければなりません。勤務時間をずらして合わせるのも一つの手ですが、3時間半も時差があるインドのように、国によっては調整が難しい場合もあります。さらに、開発コストが為替変動の影響で上下しやすい点も認識しておきましょう。
7.オフショア開発はサポート体制が整った会社を選ぼう
オフショア開発を成功させるポイントは適切な企業を選んで任せることです。一方、苦労を生みだすポイントとして言語の違いが挙げられます。
日本の開発会社がフロント対応をするNSMなら、そのような苦労の軽減が可能です。オフショア開発が初めてでも、日本人のSEと営業が丁寧にサポートするので心配はいりません。オフショア開発を検討されているのであれば、まずはお気軽にご相談ください。