ICタグの導入をスムーズに実施して期待する効果を得るためには、導入の流れを把握することと、ステップごとに確認すべきポイントを洗い出すことが大切です。ICタグを活用したシステムを導入する流れと、各ステップで確認すべきポイントを紹介します。
ICタグの基礎知識
ICタグは、情報を記録するICチップと無線通信用アンテナを組み合わせた小型のタグです。対象のモノや人に装着し、無線による自動認識で対象物を電子的に識別・管理するために用いられます。
ICタグの導入ステップ
ICタグを活用したRFIDソリューションの導入ステップは以下のとおりです。
1.現状分析・課題抽出
2.導入効果検証
3.ハードウェアの選定
4.システム設計・開発・テスト
5.現場への導入・構築
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
1.現状分析・課題抽出
ICタグ導入を検討している現場の状況や業務内容を把握したうえで、課題を洗い出します。あわせて、導入目的と期待する効果についても明確にします。 確認すべきポイントは以下のとおりです。
検討対象業務の課題は何か
検討対象業務のあるべき姿はどういう状態か
ICタグの導入によってどのような効果を期待するか
2.導入効果の検証
実際の運用を想定した読み取り実験を行います。そのうえで、導入費用ならびに導入効果を算出し、現実的に導入可能かを検討します。 確認すべきポイントは以下のとおりです。
ICタグを貼付する対象物
ICタグを貼り付ける対象物が何か、対象物のどこに貼り付けるか、対象物の材質は何かなどを確認・特定します。金属や水分を多く含む対象物に貼り付ける場合、耐性に優れたICタグを選定する必要があります。
ICタグの読み取り環境
読み取り時の姿や通過ライン、および周辺環境を確認します。
ICタグの読み取り条件
ICタグの読み取り処理時間や通信距離、同時に最大何枚まで読み取るのかなどの条件を洗い出します。
周辺機器への影響有無確認
ほかの精密機器や電波を発信する装置などがあるエリアでICタグを使う場合は、ノイズの影響の有無といった項目の確認が事前に必要です。影響をおよぼす可能性がある場合は、その対応策を検討します。
導入費用の算出
ハードウェアの初期費用、ならびにメンテナンスや機器の追加・変更などの運用費用を算出します。
導入効果の算出
ICタグ導入によって期待する効果を、生産性向上、作業精度向上、人的コスト削減、セキュリティレベル向上などの観点から算出します。
3.ハードウェアの選定
導入効果検証の結果をふまえて、RFIDソリューションを構築するために必要なハードウェアをそろえます。 確認すべきポイントは以下のとおりです。
ICタグ
ICタグのサイズや形状、機能は多種多様です。そのため、利用目的や環境に適したICタグを選定する必要があります。 ICタグ選定の際には、目的に適した種類(サイズ、形状、耐久性、メモリなど)を決定するだけでなく、取り付け位置や取り付け方法も考慮する必要があります。
RFIDリーダライタ
電波を用いて、ICタグのデータを非接触で読み書きする機器です。固定式リーダライタやハンディ型リーダライタなどの種類があります。運用環境に応じた読み取り機器・方法を考えて、最適な製品を検討する必要があります。 RFIDリーダライタを導入する際には、既存の周辺機器と電波の干渉を起こさないかを事前に確認することが賢明です。相互に影響をおよぼすリスクがある場合は、リーダライタの送信電力レベルを調整したり、ICタグの貼付位置を変えたりするなどの対策を実施します。
RFIDアンテナ
固定式リーダライタを使う場合に導入する必要があります。RFIDタグの読み取り可能範囲を考慮して、設置位置と台数を検討します。
RFIDプリンタ
ICタグに情報を書き込むと同時に、文字やバーコードなどを印刷する装置です。製品にICタグを貼り付けて運用する場合に必要となります。
4.システム設計・開発・テスト
実務で問題なく運用できるシステムを設計・開発します。その後テストと修正をくり返して、システムを最適化させていきます。実務を行う現場での活用のみならず、導入後のシステム管理や運用も見すえて進めることが重要です。 確認すべきポイントは以下のとおりです。
ミドルウェアの導入検討
開発工数の削減や拡張性確保のために、ICタグから読み取ったデータを加工・管理するミドルウェアの導入が効果的な場合があります。ミドルウェアの導入を検討する際には、基幹システムが利用できるデータに加工できることや、保守ツールが充実していることを確認します。
ダッシュボードの導入検討
ICタグで読み取った生のデータを価値ある情報として活用するには、データをわかりやすい形に加工し可視化するダッシュボードが有効です。ユーザーの使い勝手が良いUIになっているかを確認します。
実運用を想定したテスト
現場で想定される対象物の動きや作業者の動きに適した状態でICタグの読み取りができるかを確認します。万が一ICタグを正確に読み取れなかった場合の対策やリカバリー方法も、この時点で検討します。
5.現場への導入・構築
テストにより最適化できた部分から、実際の現場の一部に徐々に適用していきます。調整を経て導入範囲を広げていき、最終的には業務全体に適用させます。
ICタグの導入をスムーズに進めるために
ICタグの導入をスムーズに進めるためには、現場検証、課題抽出、費用対効果の検証が非常に重要です。これらを適切かつ迅速に進めるには、システムインテグレーションの専門家であり、ICタグの導入実績が豊富なSIerに相談することが賢明といえるでしょう。 NSMは導入実績が豊富な独立系SIerのひとつです。メーカーにとらわれることなく最適なICタグを選定し、導入・運用までトータルでRFIDソリューションを提供しています。ICタグのご相談や、導入にお困りの際は、まずはNSMにご相談ください。
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